KEK 素粒子原子核研究所 金茶会 ホームページ

updated 2009.November.28(by Komatsubara)

(drawn  by T. Haruyama)
目的
素粒子原子核研究所のコロキウムという位置づけのもと、 素粒子原子核物理学に限定されない幅広い話題を提供し、 様々なことを、形式張らずに自由に意見交換 ができる場を設けます。
素粒子原子核研究所の実験、理論研究者が 自身の研究分野を超えた交流を行う きっかけとなるようにします。
とりきめなど
・日時:月一回のペースで開催します。
・時間:17:00〜18:00 (16:30よりお茶を出します)。
・場所:4号館セミナーホール(原則)。
・主に日本語による発表を行う 。
・エッセンスをわかりやすく話すよう心がける。
・インフォーマルディスッションの時間を多く取る。
・ポスターを貼り出して宣伝に努める。
世話人(2009年度) 磯(世話人代表)・小松原・齋藤・徳宿・長谷川
No. 年月日 講演者 タイトル file 講 演 要 旨
第38回 2010.03.12(金)
(今年度の最終回です)
鈴木英之(東京理科大学理工学部) 重力崩壊型超新星爆発とブラックホール形成時に放出されるニュートリノ - 超新星1987Aのように、 重い星のコアは重力崩壊をして超新星爆発を起こすと同時に大量のニュートリノを放出する。 このような重力崩壊型超新星爆発の数値シミュレーションは、 ここ20年の間に、ニュートリノ輸送をあまり考慮しない多次元計算、 詳細なニュートリノ輸送を伴う1次元計算、ニュートリノ輸送を改良しつつある多次元計算と進歩してきた。 軽いコアの弱い爆発を除くと、自転やSASI などの非球対称性が爆発に対して重要な役割を担っている可能性が 指摘されているが、 逆に爆発せず球対称ブラックホールが形成される場合のニュートリノ放出に関して、 住吉らを中心に研究を進めてきた。 本講演では、近年の超新星シミュレーションを概観するとともに、 核物質の状態方程式やニュートリノ振動との関連についても紹介する。 また新学術領域研究「素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明」 における連携研究にもふれたい。
第37回 2010.02.19(金) 酒見泰寛(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター) 冷却不安定原子を用いた電子の電気双極子能率探索 - 基本対称性・相互作用を調べるため、永年、様々な方法で、 基本粒子の永久電気双極子能率(EDM)の探索が行われている。 標準模型を超える理論的枠組みでは、EDMは自然に出現し、 現在の実験技術で測定可能な範囲にさしかかっている。 特定の放射性元素では、電子EDMの増幅度が極めて高いことに着目し、 東北大・CYRICでは、増幅度が最大となるフランシウム原子のEDM探索を進めている。
これまで原子EDM探索は、原子線ビームを用いて行われており、 原子スピン偏極保持時間や外場の非一様性等、測定精度に大きく影響していた。 今回、この測定限界を乗り越えるために、レーザー冷却・トラップ技術を 組合わせて生成する冷却不安定原子を用いた高精度EDM探索技術の確立を 目指している。原子EDMの背景とともに、現状を紹介する。
第36回 2009.12.11(金) 笹尾登(岡山大学極限量子研究コア) 原子を利用したニュートリノ質量分光の展望 - 「130億年余の宇宙史の中で宇宙から反物質が消滅したが、その機構は如何なるものか?最新の観測で明らかになった暗黒エネル ギーや暗黒物質の正体は何か?」など宇宙には未だ残された謎がある。物質優勢の宇宙を説明する理論として、レプトジェニシスと呼ばれるシナリオが有力であ るが、この理論の重要な鍵は、レプトン(電子やニュートリノなど)についてもCP対称性の破れが存在すると同時に、ニュートリノがマヨナラ型の質量を持つ 必要がある。何れも現在未確認である。我々はこうした疑問に答えるべく、「原子を用いたニュートリノ質量分光」実験を開始した。原子過程を使う長所は、そ のエネルギー準位が対象とするニュートリノ質量に比較的近く精密測定を可能にする点である。一方、弱い相互作用であるが故に過程そのものが起きる頻度が非 常に小さいという弱点がある。我々はこの短所を克服するため、従来とは全く異なる原理(マクロコヒーランス増幅機構と呼んでいる)や手法を使う。本講演で は、こうした新しい分野の魅力を紹介したい。なお「原子を用いたニュートリノ質量分光」研究は岡山大学・理学部・付属量子宇宙センターグループとの共同研 究である。
第35回 2009.10.30(金) 田崎晴明(学習院大学理学部) 非平衡定常系の熱力学にむけて pdf 熱力学というのは物理学のなかでも特別な位置を占める体系である。 19世紀に完成された(平衡)熱力学は、ミクロの原子・分子の存在をいっさい仮定せず、 完全にマクロなスケールだけで完結する美しくかつ定量的に厳密な理論体系だった。 ミクロを参照しないのだから、熱力学は、基盤となる (とナイーブに思われる)ミクロ理論がニュートン力学か、 量子力学か、あるいはよりミクロな別の理論であるかといった詳細には まったく煩わされずに成立する。熱力学が前世紀初頭の量子力学革命を なんら変更を受けずに生き延びた(というよりも、革命を先導する役割を担った) ことはよく知られている。また、ボルツマン、ギブスらが平衡統計力学を構築する際にも、 熱力学の体系は本質的に重要なガイドとなった。
21世紀の今、非平衡系に適用しうる統計力学を構築することは、 全く手つかずといっていい未解決問題である。われわれは、 その出発点として、非平衡定常系に おける操作的な熱力学を 構築することを目指して研究を進めてきた。その結果、 (当然だが)非平衡の世界は平衡とは本質的に異なり、 熱力学の拡張も決して 一筋縄ではいかないことを痛感している。 ここでは、われわれの試みの一端と、非平衡の世界に踏み込むと (おそらく必然的に)顔を出してくる「ねじれ」について、 予備知識を仮定せずに解説したい。
第34回 2009.10.1(木) 早野龍五(東大物理) 反陽子・基礎物理定数・CPT対称性 pdf  CERNの反陽子減速器施設で我々が取り組んでいる研究のうち、 (1)反陽子ヘリウム原子と、(2)反水素原子について紹介する。
 (1) 反陽子ヘリウム原子は我々がKEK PSにおいて偶然発見し、 その後CERNでレーザー分光法を開拓してきた。種々の技術革新により 分光精度が向上し、最近では10桁の絶対精度を達成し、 その結果は科学技術委員会が4年ごとに更新している 基礎物理定数のCODATA 2006年版に反映されている。
 (2) 一方、反水素原子を大量に生成して精密分光を行い、 これを水素原子と比較することは、CPT対称性の高精度検証手段として 期待されている。数年前、我々は毎秒数百個の反水素原子の生成に 成功し、その分光に向けた努力を続けているが、まだ分光するには 至っていない。
 これらの理論的背景、実験技術、今後の展望について論じる。
第33回 2009.9.4(金) 新竹積
(理研、播磨研究所、放射光科学総合研究センター)
X線信号のヘテロダイン検出を提案。X線FELはタンパク質1分子の構造解析を可能とするだろうか。 pdf1

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pdf3
 X線自由電子レーザー(以下、X線FELと呼ぶ)が世界の3箇所で建設中である。 これは従来の放射光よりも10桁以上も高い輝度のコヒーレントなX線を発生できるために、 炭素、酸素、窒素そして水素などの軽元素からなる高分子、とくに生体高分子(タンパク質)の原子レベルの構造決定手法に 飛躍的な進歩をもたらす可能性がある。これまで放射光が大きく貢献してきたタンパク質のX線構造解析では、 幾多の困難を乗り越えてタンパク質を結晶化し、Bragg反射によって弱いX線散乱を増幅し精密なるX線観測を行ってきた。 ここにX線FELが登場し、サンプルを結晶化をせず、すなわちBragg反射を利用せずとも 軽元素からなる高分子の単分子イメージングが可能になろうとしているのである。
 しかし、XFELをもってしても、あまりにタンパク質1分子からの散乱X線信号は弱く、 CCD検出器のノイズレベルよりはるかに弱い(0.01 photon/pixel)。 そこで、金粒子をタンパクにつけて強く散乱させ、タンパク質からの弱い信号をヘテロダイン増幅するアイデアを提案した (Shintake, PRE-78, 041906 (2008))。 これによって最大1000倍もX線強度が高くなる。 これが実現すれば生物学に多大な貢献ができるものと期待されている。 たとえば現在ゲノム創薬において、最も重要な研究テーマであるGPCRを代表とする薬物受容体は、 いわゆる膜タンパク質であり結晶化が困難な場合が多く、 X線FELによる単分子イメージングが可能となれば、 ゲノム創薬に大きな技術的進歩をもたらすであろう。
第32回 2009.7.1(水) 竹内繁樹
(北大、阪大)
光子を用いた量子回路の実現と展望 pdf 量子力学の基本的な性質を直接情報処理に応用する、量子情報技術が注目されている。量子情報の担体の中でも光子は、長距離伝送 が可能でかつ高精度での状態検出が可能という特長をもつ。本講演では、この光子を用いた量子情報通信処理に関し、我々の、複数の量子ゲートを組み込んだ、 光量子回路の実現[1]とその量子メトロロジーへの応用[2]に関する研究について紹介する。
[1] Okamoto et. al., Science, vol 323, 483 (2009).
[2] Nagata et. al., Science, vol 316, 726 (2007).
第31回 2009.6.11(木) 細野秀雄
(東京工業大学フロンティア研究センター&応用セラミックス研究所)
新たに発見された二つの超伝導物質 ー 超伝導セメントと鉄系高温超伝導 ー pdf 私たちの研究グループはこれまで、高い伝導性をもつ透明なアモルファス酸化物半導体(TAOS)などの新物質を発見してきた。 これらは現在、有機ELなどに実用化されつつある。この研究の一環として、最近、2つの新しい超伝導物質、「超伝導セメント」および「鉄系高温超伝導物 質」を発見した。12CaO・7Al2O3(C12A7)という絶縁物質はセメントの構成成分として知られていたが、この物質に細工を施すことに成功し た。さらに金属状態を低温まで冷やすと、0.2-0.4 Kで超伝導状態になることを見いだした。すなわち「超伝導セメント」が実現したのである。また、透明P型半導体から派出した磁性半導体の探索過程で、昨年 来大きな話題となっている鉄(ニッケル)オキシニクタイドの高温超伝導も見出すことができた。本講演では、これら2つの超伝導物質の発見に至るまでの経緯 と最近の進展について紹介する。


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