(drawn by T. Haruyama) | 目的 素核研の所員がお互いの研究への理解を深めるとともに、研究に関係する様々なことを気軽に発表し、形式張らず自由に意見交換ができる場を定常的に設ける。 とりきめなど ・日時:第1金曜日と第3金曜日(固定) ・時間:16:00〜17:30 (固定) ・場所:4号館セミナーホール(固定) ・所長・副所長・主幹は出席義務(他のアポを入れない)。 ・発表者は主にKEK職員とする。 ・主に日本語による発表を行う 。 ・30分程度のトピックス発表を中心とする。 ・エッセンスをわかりやすく話すよう心がける。 ・インフォーマルディスッションの時間を多く取る。 ・茶菓子は寄付と飲食物持ち込みでまかなう。 ・ポスターを貼り出して宣伝に努める。 2008年度世話人 磯(世話人代表)・小松原・齋藤・徳宿・羽澄 2007年度世話人 近藤(世話人代表)・磯・小松原・齋藤・羽澄 |
No. | 年月日 | 講演者 | タイトル | file | 講 演 要 旨 |
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第30回 | 2009.2.20(金) 今年度はこの回が最後です。 | 若槻壮市(物構研) | 加速器ベースの構造生物学の目指すもの(2) | 第25回 : 2008.11.21(金) の続きです。(note added on 2008.03.31: ファイルを更新しました。) 生命科学・医学、特に、分子生物学、細胞生物学、生化学の研究ではタンパク質、DNA,RNA,糖鎖などの生体分子の原子レベルでの構造解明が必須となっている。構造決定にもっとも有力な手法の一つが放射光X線結晶構造解析であるが、タンパク質の形を見ることでその機能をどこまで解明できるのだろうか?タンパク質の一生を眺めると、DNA⇒RNA⇒タンパク質というセントラルドグマだけでは理解できない問題がある。タンパク質は合成後に小分子を付加された後、目的地に運ばれて初めて機能を発揮することが多いが、これは遺伝子設計図には直接書かれていない。このような翻訳後修飾と目的地へのタンパク質輸送がどのように実現されているかの研究を紹介するとともに、当研究を進める上で不可欠の放射光X線結晶構造解析の現状と限界、次世代放射光で目指す構造生物学について議論する。 | |
第29回 | 2009.2.6(金) | 北澤良久 | 南部先生と自発的対称性の破れについて | 小林先生・益川先生と一緒に2008年ノーベル物理学賞を受賞された南部先生の業績を自発的対称性の破れの研究を中心に解説します。自発的に破れた対称性とは、隠れた対称性とも言えます。自発的対称性の破れによって、素粒子のゲージ理論は初めて現実世界との接点を持つことが可能となりました。素粒子物理学の真空と、物質(超伝導体)の基底状態には、驚く程の類似点が隠れていたのです。カラー量子数の導入、量子色力学の提唱、ハドロンのひも模型などと共通する、物理現象の本質を見抜く南部先生の慧眼の一端に触れられれば幸いです。 | |
第28回 | 2009.1.16(金) | 斎藤直人 | 超低温ミューオンビームを用いたミューオン精密測定の挑戦 | ミューオンの磁気双極子モーメントは、素粒子標準模型からのずれを示す数少ない実験結果の一つである。BNLでの実験結果の発表以降、実験・理論ともに改善の努力が続いている。その中で、我々は、いよいよ稼働し始めたJ-PARCでの大強度陽子ビームを使って超低温ミューオンビームを実現することで、従来の方法を超える測定実験を行う検討を進めている。EDMの測定も視野に入れて、この新しい実験について紹介する。 | |
第27回 | 2008.12.19(金) この日は17:00開始です。 | 岡田安弘 | 小林・益川理論とCP対称性 | 素粒子物理は対称性を手掛かりにして発展してきた。K中間子で見つかったCP対称性の破れが、ゲージ理論の時代の幕開けとともに小林・益川理論によりクォークの世代構造の予言に導いたのは著しい成功例である。ここではCP対称性がこれまでに果たしてきた役割と、これからの素粒子物理を探るために期待される役割について議論する。あわせて、今年のノーベルウィーク滞在の報告をしたい。 | |
第26回 | 2008.12.5(金) | 高橋俊行 | ハイパー核分光ーKEK-PSからJ-PARCへー | ハイパー核とは、ΛやΣ、Ξ粒子などストレンジクォークを含むバリオン(ハイペロン)を含む原子核である。これらのハイペロンはPauliの排他律の制約を受けず原子核深部に入ることができる。また、ハイペロンが入ることにより、原子核構造などの変化が期待される。 ハイパー核分光により、ハイパー核の構造や直接的な散乱実験が困難なハイペロンー核子、ハイペロン間相互作用について情報を得ることができる。ここでは、ハイパー核分光研究について、その目的やこれまでKEK-PSやBNL-AGSで行なわれていた研究やその成果、今後J-PARCで行なわれる実験について紹介する。 | |
第25回 | 2008.11.21(金) | 若槻壮市(物構研) | 加速器ベースの構造生物学の目指すもの | 第30回を参照 | 生命科学・医学、特に、分子生物学、細胞生物学、生化学の研究ではタンパク質、DNA,RNA,糖鎖などの生体分子の原子レベルでの構造解明が必須となっている。構造決定にもっとも有力な手法の一つが放射光X線結晶構造解析であるが、タンパク質の形を見ることでその機能をどこまで解明できるのだろうか?タンパク質の一生を眺めると、DNA⇒RNA⇒タンパク質というセントラルドグマだけでは理解できない問題がある。タンパク質は合成後に小分子を付加された後、目的地に運ばれて初めて機能を発揮することが多いが、これは遺伝子設計図には直接書かれていない。このような翻訳後修飾と目的地へのタンパク質輸送がどのように実現されているかの研究を紹介するとともに、当研究を進める上で不可欠の放射光X線結晶構造解析の現状と限界、次世代放射光で目指す構造生物学について議論する。 |
第24回 | 2008.11.7(金) | 近藤敬比古(素核研名誉教授) | LHCの現状とCERNの将来計画 | pdf ppt | LHC加速器と実験装置は15年の建設を終えて運転を開始した。9月10日には陽子ビームを入射エネルギー450GeVで周回させることに成功した。また各測定器もビーム周回に伴うイベントを観測した。しかし9月19日には加速器で大量のヘリウム漏れが発生し、その把握と修理のため運転開始は2009年まで延びることになった。これらのLHCの現状を紹介し、またCERNが検討している将来計画案も簡単に紹介する。 |
第23回 | 2008.10.17(金) | 大見和史(加速器) | クラブ衝突のビーム物理 | KEKBでは2007年まで、交差角22mradでのビームビーム衝突でルミノシティを供給していた。交差角を、クラブ空洞を用い、ゼロにすることで、ルミノシティを2倍以上、上げられることがシミュレーションでわかった。KEKBにおいて2007年からクラブ衝突の実証試験を行っている。現状では予測されたルミノシティには届いていない。 ここではクラブ空洞でどうしてルミノシティがあがるのか、どういった原因がルミノシティを劣化させるのかを議論する。 | |
第22回 | 2008.10.3(金) | 小松原健 | 素粒子原子核物理の中のK中間子崩壊実験 | J-PARCで行う中性K中間子稀崩壊の研究が素粒子原子核物理の中で持つ意義について論じたいと思います。実験の技術的詳細には立ち入りません。 | |
第21回 | 2008.9.5(金) | 三原智 | Lepton Flavour Violation | 宇宙線ミューオンの発見に遅れること10年、1947年にはすでに現在の意味での LFV崩壊探索が行われている。その後も延々とLFV崩壊探索は進められ、その時々 に物理界の注目を集めてきた。そろそろ見つかるのか、あるいはどこかで実験が 限界に達するのか。これまで行なわれてきたいくつかの実験を概観しながら、近 い将来に期待される実験結果について所見を述べる。 | |
第20回 | 2008.7.18(金) | 筒井泉 | 量子力学の基礎問題と近年の話題 | 近年、量子情報科学の発展を契機に量子力学の基礎が再考され、新たな発展も生まれ つつあります。この講演では、量子力学の基礎に関わる観測問題、古典・量子の境界、 非局所性や状況依存性などの概念的な問題を簡単に説明するとともに、最近の量子化 や量子エンタングルメントの数理の問題、不確定性関係の見直しなどの話題を紹介し ます。 | |
第19回 | 2008.7.4(金) | 田島俊樹 | レーザーで何が出来るの? | 20世紀終盤から急速に成長した高強度のレーザーを使うと、 基礎物理に何が出来るのだろう? 先端加速器科学の一翼として、 将来の極コンパク ト加速器に可能性を開く「レーザー加速」の研究は、ようやく加速器研究の仲間に入 れてもらいかけてきている。 そこでその一端を紹介してみよう。 しかしながら、 もっと基本に立ち帰ると、所謂「高エネルギーのルミノシティーパラダイム」にどう 向き合うのかという問題への根本的な対応はあるのであろうか? 量子論のみならず、相対論そのものにもっと向き合った科学という手もあるであろう。 手探りを覚悟で、皆様の議論誘発への俎上の肴となってみよう。 | |
第18回 | 2008.6.20(金) | 清水裕彦(物構研) | 中性子の基礎物理 | 低速の中性子は精密測定に適している。宇宙初期の元素合成の重要パラメータである中性子寿命、CKM行列ユニタリティの精密検証、 電気双極子能率及び未知中距離力を通じた新しい物理探索について、J-PARCパルス中性子源からの冷中性子を用いた研究から、 特殊中性子源を用いた研究展開の可能性について、紹介する。 | |
第17回 | 2008.6.6(金) | 板倉数記 | 高エネルギー極限のQCDからみたRHICの物理 | ppt | 2000年から稼動しているRHIC実験の大きな成果は、 クォーク・グルオン・プラズマ状態の生成だけでなく、 高エネルギー散乱で出現する高密度グルオン状態 (「カラーグラス凝縮」)の存在も捉えたことにあります。 この講演では、RHICの物理を高エネルギー極限からみた ときにどう記述するかを解説します。 |
第16回 | 2008.5.16(金) | 西田昌平 | 似て非なる話 ―荷電B中間子と中性B中間子の直接的CP対称性の破れの差― | Belle は、BがKとπに崩壊する場合の直接的CP対称性の破れについて、 荷電B中間子と中性B中間子で破れ具合いが異なることを観測した。 これは標準模型以外の新しいCP対称性を示唆するものかもしれない。 先日Nature誌に掲載されたこの測定とその解釈について、 できるだけ平易に説明したい。 | |
第15回 | 2008.4.18(金) | 西村淳 | スーパーコンピュータで探る超弦理論 | ppt pdf | 超弦理論はなかなか現実世界と結びつかないとの批判を、 しばしば耳にします。このような状況を打開すべく、 格子シミュレーションに相当するような超弦理論の研究が、 本格化してきました。最近プレスリリースされた ブラックホールの内部構造に関する研究を含め、超弦理論 研究の現状をご紹介します。 |
第14回 | 2008.3.7(金) | 羽澄昌史 | 宇宙背景放射(CMB)の偏光度測定 ―ビッグバンの前を探る― | インフレーションの検証に挑む新しい宇宙論実験を始めたので紹介する。 超高エネルギー物理としての側面(量子重力理論のテストなど)にも実験の立場から触れる。難しい話は無し。 | |
第13回 | 2008.2.15(金) | 歳藤利行(計算科学センター) | Geant4の医学分野における応用 | KEKでは、Geant4の開発グループと国内の粒子線治療施設の研究者と共同で、粒子線治療のためのシミュレーション基盤の開発研究をすすめている。本研究を中心に、Geant4の医療や宇宙・地雷探査・石油探査などへの応用事例も紹介する。 | |
第12回 | 2008.2.1(金) | 夏梅誠 | 超弦理論で探るクォーク・グルーオン・プラズマ | 超弦理論によると、ゲージ理論とブラックホールには密接な関係があ る。そこで超弦理論を使ったクォーク・グルーオン・プラズマの解析について紹介する。 | |
第11回 | 2008.1.18(金) | 上原貞治 | Belle実験での4つのクォークを含む新粒子の発見 | KEKB・Belle実験で B中間子の崩壊事象中に発見された新粒子 Z(4430) について解説する。この粒子は、チャームクォーク・反チャームクォーク対を内部に含み、かつ電荷を持っているので、4つのクォークからできていると考えられる。 | |
第10回 | 2007.12.21(金) | 田中万博(J-PARCセンター) | J-PARC ハドロンビームラインの建設現状 | J-PARCハドロン実験施設は、本年の6月末に施設部工事がほぼ完了し、現在は来年の12月のファーストビームに向けて電磁石等のビームライン機器の設置が進行中である。ハドロン実験施設に取り入れられた大強度ビームを取り扱うための色々な工夫と建設の現状を紹介する。 | |
第9回 | 2007.12.07(金) | 金正倫計(J-PARCセンター) | J-PARC RCSで3GeVビームを達成 | ppt pdf | 10月31日午後2時3分 J-PARC RCSでは所期性能でありますエネルギー3GeVを達成いたしました。これまでの数多くのトラブルとRCSの現状について報告いたします。 |
第8回 | 2007.11.16(金) | 中尾幹彦 | KEKB・Belleアップグレード計画の概要とめざす物理 | KEKB・Belle のアップグレードがいよいよ現実となろうとしている。積分ルミノシティの大幅な増強により標準理論を越える物理が見えてくる可能性は多岐に渡るが、その中から、トピックを選んで紹介する。 | |
第7回 | 2007.11.02(金) | 中本建志 (超伝導低温工学センター) | LHC加速器建設の現状 | CERN-LHC加速器は建設がほぼ完了し、現在は2008年5月の ビームコミッショニングを目指して、超伝導磁石システムを中心とした ハードウェアコミッショニングが行われている。これまで発生したトラ ブルやその解決策も含め、加速器建設の現状について報告する。 | |
第6回 | 2007.10.19(金) | 春山富義 | 900L超高純度液体キセノンカロリメータを実現した低温技術の開発 | ミュー粒子稀崩壊実験の要である900L大型液体キセノンカロリメータを現実のものにしたKEK開発小型冷凍機による高精度温度制御と、液体ポンプと吸着剤による超高純度循環精製の成功について、金属のアルミが浮いてしまう等、液体キセノン特有の話を交えて述べる。 | |
第5回 | 2007.10.5(金) | 河田洋(物構研) | 次期放射光光源としてのERL計画の現状 II | 第4回金茶会ではERL計画の概要と開発状況を加速器中心に報告した。今回はERL計画によって可能となると期待される先端的な研究のいくつかを紹介する。 | |
第4回 | 2007.9.7(金) | 河田洋(物構研) | 次期放射光光源としてのERL計画の現状 I | 次期放射光光源としてエネルギー回収型リニアック(ERL)の開発を進めている。ERLの概要、開かれる放射光科学研究、現状の開発状況、そして今後の実現に向けての展開に関して解説する。 | |
第3回 | 2007.7.20(金) | 橋本省二 | 物質に重さがある理由の検証(格子QCDの発展) | 格子上での厳密なカイラル対称性の実現によって、自発的カイラル対称性の破れというQCDの基本的な性質に、ようやく格子QCDによる第一原理計算で迫ることができるようになった。そのことの意味と将来の展望を議論したい。 | |
第2回 | 2007.7.6(金) | 堺井義秀 | B中間子による量子もつれの検証 | ppt pdf | Belle グループは「B中間子による量子もつれの検証」の結果を発表したが、その物理的背景および実験データの解析方法・結果について簡単に解説する |
第1回 | 2007.6.15(金) | 小玉英雄 | 宇宙物理学最前線 −21世紀に残された4つの謎ー | ppt pdf | 「インフレーションモデル」「ダークエネルギー」「宇宙ジェット」「超高エネルギー宇宙線」という4つの宇宙物理学の基本問題を軸として、宇宙物理学の研究の現状を紹介する。[参考文献付] |